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特集221号


  芋焼酎ブームを追い風に、 めざすは宮崎焼酎ブランドの確立
  ■宮崎県酒造組合  宮崎市老松2-1-37 tel.0985-23-5165

 現在、県内には39の焼酎蔵元と、43の醸造所がある。これらの醸造所で作られている焼酎は、年間7万6,000キロリットル(平成13年度)。宮崎で「ちょっと一杯」といえば、それは焼酎といっていいほど、どの居酒屋にも焼酎がある。ちなみに、平成13年の成人人口10万人あたりの焼酎消費量は2,352キロリットルで、日本一!。
渡邊眞一郎さん
宮崎県酒造組合会長の渡邊眞一郎さん(京屋酒造代表取締役)
 県内の醸造元で構成する宮崎県酒造組合で、原田事務長に宮崎焼酎の特徴を伺った。
「まず、宮崎の焼酎の特徴は、いろんな原料で造っていること。鹿児島は芋、大分は麦とよくいわれますが、宮崎はなんでもあります。それだけに、味も香りもいろんな楽しみ方ができるのが魅力でしょう。ひところ、ソバに始まって、麦がブームになったことがありますが、今は芋です。ソバや麦は、洋酒感覚の蒸留酒として好まれたのに対して、芋は南九州本来の芋焼酎の味が受け入れられているようです。」
 しかしながら、平成2年に焼酎の税率が一気に上がり、そのあおりをうけて廃業した蔵元が多かったことも記憶に新しく、今の焼酎ブームを定着させることができるか、その努力のしどころだとも。
 今年10月1日に新組織としてスタートした県酒造組合の会長をつとめる日南市の京屋酒造・渡邊眞一郎さんは、「このブームを足がかりに、組合40社が落ちこぼれることなく地場産業の振興につながっていけば」と語る。
 そのためには1社ではできないことを、共同で取り組むための組合であってほしい。
「ブームが一過性で終わると、県内の焼酎業界は大変なことになります。『宮崎焼酎』のブランドを確立するのは今でしょう。そのためにイベントもからめた消費拡大のPRが必要で、需要振興委員会を作って対応を考えています。」
 一方で、ブームを追い風と喜んでばかりはいられない現状もある。焼酎粕の海洋投棄を全廃する、海洋汚染防止を強化するロンドン条約議定書の批准に向けて、蔵元は焼酎粕の処理対策をとらなければ、廃業に追い込まれる危険性もある。
 「焼酎粕を焼却したり、飼料にしたり、いろんな形で処理プラントが稼働し始めていますが、年に4カ月程度しか仕込みをしない業者が自前の処理施設を造るのは難しい話です。しかし、なんらかの形で処理をしないと焼酎が造れない。地域ごとに蔵の特性もあって、みんなが困っているなら一括して組合で、というわけにもいかないんです。現在、地域ごとに模索していて、例えば日南地区の『焼酎日南協同組合』では、日南市と王子製紙に協力を求めて、王子製紙のプラントを使って焼酎粕が処理できないか試験を続けているところです。県内各地でこうした努力を続けていますよ。おいしい宮崎焼酎を作り続けるために」
 めざすは宮崎焼酎ブランドの確立。ブームをステップに、まとまることで安定した生産が続けられる体制をつくりあげたいと、焼酎王国を支える蔵元たちは努力を続けている。
本格焼酎まつり
十一月一日の『本格焼酎の日』にちなむ「本格焼酎まつり」
焼酎の聞き酒
焼酎の聞き酒は、「本格焼酎まつり」の人気イベント
本格焼酎とは?
 焼酎には醸造法の違いで甲種と乙種がある。甲は何度も蒸留してアルコール分を95度にしたものを薄めるため、原料の特性がほとんどないのに対して、乙は1回だけの蒸留でアルコール分は45度以下。味や香りに原料の特性が残っているのが特徴。
 しかし、「甲」に対して「乙」は語感が劣ることから、昭和30年代に宮崎の焼酎醸造元が作る宮崎県酒造組合(当時は同連合会)を中心に、大蔵省にイメージアップを陳情。同33年に「本格焼酎」の名称が認められた。現在「本格焼酎」は全国で使われている。

  県外客をホテルにひきつける  九州のホテル初の焼酎バー

  焼酎バー「ステラ」  シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート

  100種類超の焼酎をショットで提供 原料で味わいが違う、宮崎の焼酎の魅力をアピール
「宮崎に折角来たから、おいしく焼酎が飲める店を紹介して欲しい。」こう聞かれて、焼酎のメッカである宮崎人がハタと困るシーンは珍しくない。なぜなら焼酎はどこの居酒屋にもあり、ちょっと一杯の席に当たり前のようにあるからだ。
 しかし、ここ数年の焼酎ブームが、本場の焼酎の飲み方にも影響を与えてきた。カランと澄んだ音をたてて、氷を浮かべたロックで飲み、おしゃれな食事と組み合わせて楽しんだりする新しい焼酎の飲み方が関東、関西から逆輸入された。
 こうした地域では焼酎を小粋なバーで出し、男性女性問わずショットバー感覚で1杯を楽しむ。これがいま人気の焼酎バーだ。
焼酎バー「ステラ」店内
関東、関西でブームになっている焼酎バー。ショットバー感覚で、焼酎が飲まれている。

焼酎バー「ステラ」店内
九州のホテルの中では、初めてのオープンとなるシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート42階の焼酎バー「ステラ」
 宮崎でおいしい焼酎を飲みたい。こうした旅行者のニーズをいち早くキャッチしたのが、シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート。10月1日に、ホテル42階に焼酎バー「ステラ」をオープンさせた。九州のホテルでは初の焼酎バーだ。
 窓の外に宮崎市街地の灯りが輝き出す午後6時。店が開くと同時に、ホテルの宿泊客がフロアに現れる。観葉植物で適度に目隠しされたフロアは、テーブルごとに置かれたロウソクがまぶしく感じるほど灯りを落とし、落ち着いた雰囲気を醸し出す。
 客の前に置かれたメニューに並ぶのは、宮崎の焼酎約70種類をはじめ、鹿児島、熊本、大分と近県のものも合わせて100種類以上。どれも原料別に、度数や味わいの特長が添えられている。中には、メニューをコピーして欲しいという注文もあるとか。
「こちらでは、焼酎をショット売りしています。普通、宮崎のお店で焼酎を頼むと1合(180ml)ですが、1ショットはその3分の1の60mlです。少しずつ味わってみると、焼酎の味や香りの違いをわかってもらえます。ロックで飲んだり、お湯割りにしたり。あとはお客様のお好みで、いろんな飲み方を楽しんでいただいています。」
と、マネージャーでベテランバーテンダーでもある清水孝一さん。


  焼酎の概念を変える洋酒感覚のショット売り
 ステラでの1ショットの値段は500円程度。オーダーしやすい量目と金額で、たくさん飲んでもらう。これもショット売りの目的だ。洋酒などに比べて、焼酎は利幅が小さいため、数を売ることで利益を出さなくてはならない。
 もう1杯のおかわりを誘うには、魅力ある銘柄を揃え、勧められる商品知識をもち、雰囲気を作る。利益を上げるには、かなり難しいジャンルかもしれない。
 「宿泊の方々には喜んでいただいていますよ。都会から本場の焼酎を求めて来られると、これまではホテルの外に行っておられましたが、そんな方々をひきとめ、おもてなしすることができるのです。しかも、1ショット500円程度という価格は、都会よりはるかに安いですから」
 芋、米、麦、そば、栗・・・さまざまな原料から作られるバラエティに富んだ宮崎の焼酎。都会風にいろんな飲み方で少しずつ味わってみると、飲み慣れた地元愛好者も「焼酎再発見」とあいなるかもしれない。
カウンターの後ろに並ぶ焼酎
カウンターの後ろには、焼酎がずらり。おしゃれなビンやラベルが目に付く。
清水孝一さん
「県外からのお客様をターゲットに、宮崎の焼酎の魅力をPRしていきたい」とマネージャーの清水孝一さん

  県内の蔵元を支える技術支援

  ■宮崎県食品開発センター

  より安定した焼酎づくりに  産学官共同の研究を重ねる
県食品開発センター
県工業技術センター内に県食品開発センターがある(佐土原町)
 県内には40の焼酎蔵元と、44の醸造場がある。これらはいずれも独自に培ってきた技術で、それぞれの味を作り出していることはいうまでもない。しかし「焼酎は生きもの」と、どの蔵元も口を揃えるように、長年の技術をもってしても対応に苦慮する事態が起きることもある。そんな時にアドバイスを求めるのが、佐土原町の県工業技術センター内にある宮崎県食品開発センターだ。
「センターの仕事は、発酵食品の開発と品質向上にあり、県内企業からの工業相談に対応しています。焼酎に関しても、相談があれば現場に出向いて原因をつきとめ、改善の指導をするなどしています。」と応用微生物部長の柏田雅徳さん。そうした現場の仕事に対応しながら、スタッフは新しい技術を確立するため研究を続けている。
研究室内
醸造設備の整った研究室

焼酎用麹菌
焼酎用麹菌。黒麹(左)と白麹

原料の芋の選別
原料の芋の選別
 研究のひとつを紹介すると「乾燥酵母の焼酎への応用に関する研究」がある。県内ほとんどの蔵元が使っている「宮崎酵母」は、県内のとある醸造場から取り出したもので、アルコールの発酵がいいために人気がある。この宮崎酵母を培養し、蔵元に分譲するのもセンターの仕事。現在研究が進んでいる乾燥酵母は、冷蔵庫で1年間保存ができる。
「液状の酵母は、注文があってから渡すまで、培養に1週間かかるのに対して、乾燥酵母は蔵に備えておけば、30分ほどぬるま湯に漬けるだけで使えます。これならもろみの活性が悪くなったときなどすぐに対応ができるんです。」
 こうした技術開発は、企業や大学と共同で行うケースが多く、宮崎大学工学部と行っている蒸留に関する研究は今年中に特許を出す予定になっている。
「焼酎は嗜好品ですが、体にいい成分も含まれている、だから体が欲する・・・要するに、おいしくて体にいいからまた飲みたくなる。そういうものであってほしいんです。芋のもつ有効成分、そして麹、酵母が作ってくれた成分をいかにうまく取り出すか、それを研究するのが我々の仕事なんです。」

  昔ながらのよさが見直される 「焼酎は本当にまじめなんです」
 研究室を見せてもらった。多くの実験器具に囲まれていた副部長の工藤哲三さんが「焼酎は本当に正直だと思いますよ。」と言った。
「今の焼酎ブームは、南九州の蔵元が地道に昔ながらの手のかかる方法で作り続けてきた焼酎が『すごいなー』『今どきたいしたものだ』とほめられているような気がするんですよ。」
 焼酎は安く作ろうと思えば、純粋アルコールを買ってきて加えたりすることで簡単に作ることができるという。しかし、どの蔵元もそんなことはしない。経営は苦しいけれど、昔からの醸造法を守り続けているのが焼酎の蔵元だというのだ。
「食の安全が叫ばれる時代、焼酎はまさに原料のはっきりした安全なものだと見直されたんですよ。今後、国内のみならずアジア諸国からも焼酎が入ってくるかもしれませんが、これまでの醸造スタイル、基本はずっと変わらないでしょうね。」
 正直に作り続ける蔵元を支える研究機関もまた、研究員の温かい人柄を感じさせる場所だった。

焼酎用酵母
焼酎用酵母
検定風景
焼酎の割水、検定風景

  5社が協業して19年  串間だからできる地場産焼酎を造る

  ■寿海酒造協業組合 (串間市)

  年間2万5千石  地産地消で業績を伸ばす
 かつてない芋焼酎ブームの中で、地場の赤芋(宮崎紅)にこだわった焼酎を造り続ける串間市の寿海酒造は、県内で唯一の協業組合だ。現在の年間石高は25,000石(約4,500kl。1石は25度換算で180リットル)。内訳は麦65%、芋32%、残りは米を原料に、年間通して製造を続けている。
寿海酒造協業組合
県内の酒造会社では唯一の協業組合
「昔は焼酎屋といったら10月から12月の3カ月間しか仕込みをしなかったものです。原料の芋がその間しかなかったんです。だからわずかしか造れませんでしたよ。」と話をされる理事長の国府光朗さん。
 原料となる食用の赤芋は、近年ますます生産農家が増え、シラス土を掘って作った室に貯蔵することで、年間通して出荷するようになった。そこから出る市場に出せない規格外の芋を同社で焼酎用に買い取ることで、両者に共存関係ができあがっているのだ。
 折しも関東・関西を中心にした芋焼酎ブーム。同社では昨年が150%増、今年はさらに130%の増産体制をとっている。
「20年近く経つと機械も古くなってきます。ちょうど新しい機械の導入時期でもあり、製造ラインを35%増産しました。このブームは本当にありがたいタイミングです。」

  懸命に売り込んだ時代を忘れない  このブームで、市場はまだ拡がる
仕込みタンク
仕込みタンクは40基。1つのタンクに5トンの芋と1トンの米麹が入る
 穏やかな笑顔で語る国府さんだが、19年前、地場の焼酎蔵が組合化を図ろうとした時期、そして軌道に乗せるまでの苦労は並大抵ではなかった。しかし、現在協業する5社の当時の石高は、合わせても800石程度。このままでは将来はないと思った、と国府さん。
「流通がどんどんよくなると、田舎の方にも大企業の焼酎が入ってくる。それに対抗する力もないし、大手の酒問屋と取引することすらできないんですから。生き残るためには、全国に売って出る力を付けるしかありませんでした。」
 石にかじりついてでも組合を成功させなければ、との思いが5人の元社長(現理事)たちをふるいたたせた。組合化することで県から高度化資金を受けることができ、工場・生産施設を建設した。
「できあがった工場を見て、本当に償還できるのか身震いしたのを覚えています。やるしかない。月の内、半分以上を県外に売り込みに行きました。しかし、『芋焼酎なんか持ってきて』と、言われ続けました。それでも、私たちが自信を持って造った焼酎です、必死で営業しましたよ。5人の理事がうまくいくためには、右肩上がりに業績を伸ばすしかないでしょう。」
原料となる芋
芋は規格外・特大品。甘さ十分で食用にもおいしい
 その結果、目標とした数字は10年目にはクリアした。そして今の芋焼酎ブームが訪れた。
「当社の主力商品は『ひむか寿』という芋焼酎です。食用の甘い芋を使うので、焼酎もまろやかな甘味があって、関東によく出ています。2杯飲むところ、3杯イケる飲み口のよさが受けているようです。今は芋の中でも特長のある焼酎を欲しがられるので、紅芋を打ち出したところもよかったのでしょう。」
 原料も地産地消。地元とともにあることを強く意識し、洗浄水の処理漕設置をはじめ、焼酎粕についても、宮崎市の会社が開発した焼酎粕を水に変える焼酎廃液処理プラントを、全国で初めて設置した。「役員も常に第一線。勤務態勢も明確にし、厳しい中にもふれあいのある職場づくりを心がけています。今、順調なのもこれまで支えてくれた人たちのおかげ。常に感謝する心を持ち続けたいと思います。市場はまだ拡げられます。」

処理プラント
焼酎粕を水に変える県内初の処理プラント
国府光朗理事長
「今はこちらのペースで商売できるようになりました。」と理事長の国府光朗さん

 
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